グルメ

 世間では近年のグルメブームがひと波去った今でも、TVや雑誌などで「食」に関する特集や番組がよく組まれています。一時のグルメブームでは、高級な物や希少な物など、値段が高くなればなるだけ「グルメな料理」というような風潮や、また、いわゆる「頑固親父」のいる店で、何もしゃべれず、親父の思うように食さなければ「出て行け」といわれるような店が流行ったりしていました。しかし私は、高級な料理などはお金がそれほど払えなかったので行く事はできませんでしたが、「頑固親父」のいる店は、たいがい行こうと思えば行けるくらいの金額でしたが、私としては敢えて行こうとは思いませんでした。何故なら、おいしい料理を提供していただいているのですから、感謝して食するのは当然のこととしても、こちらがお金を払っているのに、それを商売している側にそんなにまで気を使って食さないといけないのか理解できなかったからです。しかし今となっては、そういった「頑固親父」の店は、今現在もやってはいるが、話題に上っていないだけか、それとも私のような考え方の人が多くなったからなのかは分かりませんがあまり聞かなくなってきましたし、ただ単なる「高い値段の」お店もあまり聞かなくなってきました。
 今の消費者は、以前のコラムでも書きましたように「安かろう悪かろう」は通じません。当たり前に「安くて良い物」を求めるようになって来ましたし、また、それだけの知識や、経験、見る目などを養ってきています。ですから、ブームの頃に流行った「高いだけの店」なんかは、続いていかなくなるのは当然のことと思います。
 しかし現実を直視して良く考えて見ますと、私たちは今本当に「舌が肥えて」きているのでしょうか?例えば今の鮮魚は天然物が少なくなってきていて、種類によっては殆どが養殖物しか口にできません。また昔は今のように世間がうるさくなかったので、私などは合成着色料や合成保存料が大量に含まれる食品やお菓子を食べて育ちました。そんな私は合成保存料、合成着色料いっぱいの食べ物や、味の濃い物を食べる事に慣れているがゆえにそれが今でも美味しく感じ、そういったものが含まれていない物や味の薄いものを食べたら、物足りなさを感じるときがあります。また、養殖に慣れているために天然物などを食べてもあまりおいしく感じない物もあるという事実があります(皆さんと違い、私だけかもしれませんが)。
 そもそも「おいしい」という定義は、主観的なものであり、客観的に表わすものでないものですが、世間が言う「おいしいもの」「グルメ」などは、やはり人と環境と時代と共に変わっていくのでしょう・・・。