感性とセンス

 「同情するなら金をくれ!」これは10数年前に放映され皆様もよくご存知のテレビドラマ「家なき子」の名台詞です。このドラマが放映される前は、テレビの世界では中々こういった生々しいセリフは言われなかったものですが、このセリフを聞いた時は軽い衝撃とともに、逆に新鮮さを感じたものでした。
 この他に、私自身の記憶に残っているもので、トヨタ クラウンのCM で「いつかはクラウン」というコピーがありました。セルシオやシーマというバルブが生んだ最高級車がまだ存在しない時代に、当時のトヨタのフラッグシップであるクラウンは、私のような一般庶民の最終目標であり、また金持ちの象徴でもありました。その大きな存在であり、憧れである「クラウン」という車を、あの一言ですべてを表現できたことが私にとってはすごく衝撃的で「そうそう、そんな感じ!」と一人で感心していました。
 コピーといえば、糸井重里さんを私は思い出すのですが、話題になったものといえば、西武セゾングループの「おいしい生活」や、カネボウの「君にクラクラ」などがあります。しかし仕事とはいえ、人の心に感動や共感を与える文章を、あの短さで表現するということは、非常に柔軟な思考や感性やセンスがなければ成しえないことでしょう。
 そう考えますと感性やセンスなどは、持って生まれたか、後に磨いたか、は別として、人に共感や感動を与えるためには必要不可欠なもののように思えてきます。ただ、
「努力などでも共感や感動を与えることはできるじゃないか」という意見もあるとは思いますが、その「努力」ができる人は、「努力ができる」センスや感性が備わっているために感動が与えられるのではないかと私は思っています。それは、芸術の世界はもちろんのこと、スポーツの世界や、もっと身近なところでは、家庭や会社の中でも当てはまるように思います。
 最近、「自分の存在が認められたい」とか「人に尊敬される人になりたい」と焦って空回りする前に、ちゃんとしたセンスや感性を磨くことを先に実行していかなければいけないんだぞ・・・・と自戒しながら焦っている自分がいる今日この頃です。