ジャーマンウィングス9525便

 ドイツの格安航空会社ジャーマンウィングス9525便が150名もの乗客乗員を犠牲に墜落した事故はご承知の通りです。私がこのコラムを書いている時点でボイスレコーダーの解析によって仮定できたことは、機長がトイレの為コックピットを離れた隙に締め出されてしまい、副操縦士が意図的に墜落させた可能性が高いということです。これを見て私がすぐに思い出したのは82年のホテルニュージャパン火災の翌日に起きた日本航空350便の墜落事故でした。この事故は本件と違い副操縦士も隣にいた事例ですが、着陸寸前の出来事であったため墜落は免れず149名の負傷者と24名の死者を出す惨事となりました。この二つの事例は共に機長や副操縦士という多くの乗客の命を預かるキーマンの精神疾患が原因の可能性が高い事例です。これらは機体の故障や欠陥等のチェック体制を厳格にし、見過ごすことがなければ事故が起きないケースとは根本的に異なり、性善説的に乗務員が墜落行為を行うはずのない前提で考えられているために起こり得た事故です。前例の機長が締め出された際も、万一客室から容易にコックピットの扉が開く構造になっていれば墜落は回避できたかもしれませんが、そうなっていれば逆にハイジャック犯はもとより、いたずらなどでもコックピットに侵入できるような構造であれば安全性に問題があると言えます。また後例では操縦する者が誤操作を行った場合の安全策は講じられていたとしても、意図的に誤操作をさせる前提での安全策は講じられていないものです。
 いずれにしても、人が自力でできない空を飛ぶことや陸上を高速で移動すること、水上を渡ることなどを文明の利器の力を頼って実現させるためには、リスクはつきものです。ただ、こういった犠牲などをきっかけに、安全対策が高められていくのも一つの現実です・・・。